顔の見えない男の研究室は1度見渡すとまるで台所のように見えました。 ただ、電子レンジに見えた箱はパソコンの画面らしく、顔の見えない男が手を触れると、レンジのドアーに発光しながら数式が流れていきました。食器棚の中には薬やすりこぎなどが入っていました。冷蔵庫もシンクの横に置いてありますが、中身はおそらく要冷蔵の薬瓶に違いないとシイは思いました。 顔の見えない男は部屋を無理に台所に見立てているようでした。 「じゃあ、そこの椅子に座ってて。」 「……ええ。」 「私は遠慮するわ。この椅子では下まで重りが届かなさそうだから。」 シイは近くの椅子に腰掛けました。装飾性のない椅子とテーブルは、西暦二〇世紀に日本で使われていた食卓膳を思い起こさせるものがありました。
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