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文章を打つ気がなかなか起きないので 絵だけさきに ・・・漫画で描きたいよう ああああ
準決勝、リトルガリバーズ対ブラックス戦 内緒で息子の応援にきていた秀人は観客席で水木と偶然鉢合わをしていた 「その声は・・・水木か?」「よう、秀人・・・まあそう身構えるなよ、俺も試合見にきたんだ」 並んで座る元チームメイト達、なんとも気まずい空気が間に流れる 「水木はなにしにここへ?」 「俺も応援だよ、本当に人殺しにされちゃたまんないからな・・・ あのガキには勝ってもらわないと、俺は絶対謝りたくないし」 ふんと鼻を鳴らす水木に秀人は頭を下げる 「私は・・・お前に謝らないといけないな、いろんなことを・・・」 申し訳なさそうにうつむきはじめた男の背中を強く叩く水木 「(話)は後にしようぜ、今はガキどもの試合に集中しようじゃないか」 どちらからともなく小さな笑い声が漏れる、長い間凍り付いていたものが 夏の日差しにゆっくりと溶かされていった・・・ ちょうどその頃、試合の真っ最中、ボール親父はついに最期の時を迎えようとしていた 窓を開け放しているのに、やけに静かで涼しい部屋の中、息も絶え絶えに息子へ重い告白をはじめる 自分はもう手遅れだということ・・・あの時仙人と交わした約束は「五年以内に全国大会優勝」 その約束は五年以上前にしたことで実はもうすでに限界を超えていたということ・・・ そして・・・竜太は自分の本当の子供ではないということを淡々と話すのだった 目をかっぴらいて驚く竜太に親父は話を続ける ・・・12年前の大きな台風の日、水色の毛布で包まれ流されてきた子供を拾った不屈夫婦は 大事な子供を捨てるなんてそんな酷い親には返せないと警察にも届けず自分達で育てることにした だがそれは間違いだった、本当の親はとても子供思いないい人間で その子には仲のいい弟と可愛い妹がいたのである・・・ 「まさか・・・まさか・・・親父・・・零人の家のことをいってるのか!?」 「わしが消えたら才葉の家へいけ、体を詳しく調べればお前が本当の子供だということが わかるだろう、ふふ、あいつの喜ぶ顔が目に浮かぶようじゃ・・・」 顔をくしゃくしゃにして声にならない声をあげる竜太 「いやだ、親父、そんなわかんないこと言い出すなよ・・・俺の親父は親父だけだ なあ、あと少しなんだ、お願いだから生きていてくれよ・・・俺を一人にしないでくれよおっ!」 ボール親父はぼろぼろと壊れたように泣き出す息子を慰めるように優しく微笑むと そっと 目を つむった 「ありがとうな、竜太・・・最期まで頑張るんじゃ、ぞ・・・」 ふきこむ風がカーテンをまきあげ眩しい光線を降らせる 遠ざかる意識の向こうで親父は自分を呼ぶ懐かしい声を聞いた 「ああ・・・静、そこにいたのか・・・」 ぼろっ 竜太の目からひときわ大きな涙の粒がこぼれる 滲んだ世界が晴れたそこには、もう彼の愛する人はこの世から完全に消え去っていた・・・
「ストラーイク!バッターアウト!ゲームセット!」 大きな歓声があがる!準決勝進出を決めたのは苦戦しながらも 見事スーパースラッガー友沢を抑えきった零人のリトルガリバーズだった 最期の大勝負で決めた噂のサイバーナックルをみて水木がうなる 「小学生の投げるものじゃないぜ、ありゃ・・・」 秀人はそれをみて複雑そうに笑った 「危ないからやめろといってるんだがいうことを聞かなくてな・・・ まああの球があればどんなバッターも打つことはできないんだろうけども」 「そんなことないだろ、俺のバカ甥っ子がいるじゃないか」 反論する水木にむっとなり、うちの息子のほうがくってかかる秀人 しばらくやいやいやっていた二人だったが、はっと我にかえり恥ずかしそうに背をむけて座りなおす まあ子供達の決着は明日つくからということで今日はいったん帰ることにした 人のほとんどいなくなった客席が陽炎でゆらゆらゆれる 「寅蔵の子・・・竜太君は・・・本当に強くていい子だな、私のもう一人の子供も生きていたら 彼や零人、さくら達と混ざって・・・ここで元気よく戦ってくれてたのだろうか」 「・・・?お前もうひとり子供がいたのか」 「ああ、もう死んでしまったがね・・・零人の双子の兄でな、名前は対にしてたんだ 竜の人と書いて竜人(るうと)、偶然にも竜太君と同じ字だったな」 竜太は泣いていた、音のない世界で、自分の嗚咽すらも耳にはいらず轟々と すっかり軽くなってしまった、からっぽのボールを前に崩れこんで吠えた 真白い光が少年の心を消し潰す、胸に押し寄せる親父との思い出の日々 大好きな大好きな・・・楽しい野球を教えてくれた お祭りで肩車をしてくれた、誕生日に似合わないケーキを焼いてくれた 悪戯した時は思いきり叱ってくれた、アサガオが枯れたとき一緒に泣いてくれた 怖い話を聞いて眠れない時は一晩中そばにいてくれた、大きな手が暖かかった ボールになって働けなくなってからも、貧乏ながら一緒に頑張ってくらしてきた スケベでお馬鹿でいい加減だったけど、誰よりも自分を愛してくれた 血のつながらない赤の他人の子供を、母さんと命をかけて守り抜いてくれた その親父が、今はどこにもいない 失って竜太は両親の深い愛を痛いほど感じていた 「・・・明日・・・明日まだ・・・もう一試合あるんだ・・・ぞ・・・親父・・・」 日はゆっくりと暮れ、空には月が昇る 無田が夕飯を部屋にもっていこうかと心配してきてくれたが 竜太は大丈夫と気丈に答え食堂へ出て行った 仲間の視線が彼に集中する・・・親父がもう駄目なことはみんな感じていた その中で、竜太は・・・ 無表情だった 感情を押さえ込んだ濁った目でご飯を盛りかっこむまだ幼い少年に 誰も声をかけることができなかった 味のしない食事を終えてそれぞれが眠りにつく 最後の戦いはいよいよ明日・・・ 38話終わり
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