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ねぼけもの 34話すっとばして 挿絵描いていた まあ・・・いっか
「ごちそうさま!おばさん、瑠璃花、今日も美味しかったよ!いってきまーす!」 朝ごはんを食べてすぐ練習に駆け出していく竜太、父親の命を賭けた最後の大会が近づいている 瑠璃花も無力ながらなにか手助けできることはないかと考えていた 「そういえば竜太はボロボロのノートを持っていたわ・・・新しいものをプレゼントしようかな」 竜太は野球で学んだことを毎日丁寧に大学ノートへ書き込んでいる勉強家だった どうせなら大事なことをあとで整理できる丈夫なファイルのほうがいいだろうと考える瑠璃花 さっそく貯金箱からあるだけのお小遣いをおろして文房具屋にむかう そこで一番いいファイルを買ったのだがなにかまだ物足りない そこでより長く使えるように布でカバーを作ることにした しかしお金はさっき使ってしまったのでいいものは買えない、なにかないかと探しているうち 押しいれに立派な皮のコートがしまってあるのを思い出した 前の家を出るとき高価なものは全部売りに出してしまったがこれだけは大事な友人が くれたものだったので母に頼んでとっておいてもらったのだ 転校前に挨拶をすることができないまま別れてしまった親友を思い出しうつむく瑠璃花 「いっちゃん・・・ごめんね、私の大切なお友達のために力をかしてね」 決心すると瑠璃花はおもいきってそのコートにはさみをいれるのだった・・・ それから瑠璃花は放課後毎日図書室に残り、ファイルカバーを作っていた 内緒で完成させて驚かせたかったのである、小さな指を何度も針で刺しながら愛情をこめて縫っていった 二週間ほど苦心しながらようやくプレゼントを完成させる これなら十年は使えるだろうという頑丈なファイルができあがった 喜んでくれるだろうか、高鳴る胸を押さえつつ瑠璃花は家へ急いで帰ることに ところが・・・息をきらしアパートへ飛び込むと、そこには信じられない光景が広がっていた 開け放しになったドアと窓、ひっくり返されたテーブル、ぐしゃぐしゃにひきだされたタンス めちゃくちゃの家・・・瑠璃花の顔から血の気がさあっと引く あわてて母親を探すがどこにも姿が見えない、不安におろおろしていると 背後からドスのきいた恐ろしい男の声が彼女の名前を呼んだ 「・・・瑠璃花ちゃん・・・やな?」 振り返るとそこには怪しい風貌のサングラス、瑠璃花は一瞬で自分達親子になにがおきたのかを悟った
この男は父の借金を取り立てにきたヤクザだ、こんなところまで追ってくるなんて・・・ 父個人の借金は全て返したはずなのに、いまだ執拗に吸い付いてくる 瑠璃花は警察を呼ぶと震える足で強気に答えるが、男はますます恐ろしい声でおどしをかけてくる 「お嬢ちゃん・・・社会には大人の事情ってのがあってな、金がだせないんなら それなりの処置をとらせてもらわなあかんのや、あんたら親子にはきちんと働いてもらうで さあいくぞ!母ちゃんはもう先に連れて行ってるからな」 「お母さんが・・・!?」 男が瑠璃花の手を強く握りひっぱっていこうとしたその時 「瑠璃花になにすんだよっ!!!」 練習から帰ってきたのであろう、竜太が飛び出してきて借金取りを突き飛ばした!驚く借金取りと瑠璃花 「なんじゃこのガキ!」「竜太!あなたには関係のないことです!ほおっておいてください」 「ほおっておけるわけないだろ!友達がさらわれるのを黙って見捨てられるか!」 くしゃと顔を歪ませ嫌な笑いを浮かべる借金取り 「なんやお前この嬢ちゃんにほれとんか、ませたやっちゃのう」 しかし飛び出してきたものの状況は変わらない、竜太がかわりに借金をたてかえることもできないのだが それでも竜太は諦めなかった 「・・・返すよ・・・俺が野球選手になって、そんなお金俺が返してやる!」 とんでもない提案だった、真剣な目で放たれたビッグマウスに男は大笑い そんなに現実は甘くない、俺も昔天才投手と呼ばれていたがガンバーズというチームに ボロ負けしてすっぱり野球を諦めたことがあると馬鹿にした これにすばやく言い返す竜太、自分はそのガンバーズのキャプテンだと・・・! 緊迫した空気が流れる、渋い顔をして睨みあっていた借金取りはやがて口をひらいた ・・・・・・面白い、ならお前が今年の全国大会で優勝できたら、待ってやる・・・・・・ 男の目は鋭かったがまっすぐだった、竜太は大きくうなずくと「男の約束だ」と強い目で見返す 冗談のような約束を大真面目に交わすと借金取りは「またくるで」と言い残し車に乗っていってしまった それは数分のことだがとても長い時間に感じられた
わっと竜太に抱きついて泣き出す瑠璃花、なんて馬鹿なことを言うがくぐもって言葉にならない ずっと無理してきたのだろう、小さな少女の心と体は壊れかけていた 竜太は素のままにおびえ泣きじゃくる瑠璃花を強く抱き返す 彼女が崩れていかないように、そのぬくもりを確かめながら愛しく抱きしめた あの時腕の中で冷たくなっていったわんこのことを思い出しながら・・・ 「まかせろ、瑠璃花は俺が絶対に守ってみせる・・・!」 「・・・・・・はいっ!」 瑠璃花は心からお礼を言うと、ようやく素直な笑顔を見せる 竜太を心から信じ運命をあずけることを決めた、それは強くまばゆいピカピカの笑顔だった・・・ 一方そのころ・・・サイバーキッズを抜けたライバル零人は かつて戦った強豪チームリトルガリバーズに入団していた 何度か手合わせしていたチームメイト達は彼の実力を知ってはいたが 今年キャプテンになった少女金岡のひとことでいきなりエースに抜擢されたことで動揺する 金岡の家の会社は才葉グループと深いつながりがあるためひいきじゃないかと不満の声があがった なかでもやっとレギュラーをとったピッチャー広橋がくいついてくる 「雫は俺の嫁だ!同棲なんて許せーん!」 ・・・零人は火事で部屋が焼けたため練習効率も考え 金岡の家へ泊めさせてもらっていることへのあてつけもあった 文句をつけられた金岡はぶーたれると「じゃあ、ハッシーは抜けた疋田先輩以上の球投げれるの?」 とつっこむ、これにはうっと黙り込む広橋 そこで零人は仲間の信頼を得るため自分のとっておきの必殺技を見せることにした あの、サイバーナックルである ・・・・・・・・・・・・ たった一投、そのひとつでグラウンドが静まり返った 誰ももう何も言うことはない、小学生離れした凄まじい魔球にみんな息を呑む 零人は仲間の反応を確かめるとにやっと笑った 「僕にはもう一度、本気で戦いたいライバルがいるんだ。だから絶対に全国大会で勝ち抜いていきたい! このサイバーナックルは誰にも打たせはしないから、仲間にいれてくれよな・・・リトルガリバーズ!」 リトルリーグ最後の夏休み、運命の輪はさらに複雑に絡み合い 火花をあげ激しく廻りだしていた・・・ 35話終わり
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