異常気象(仮)〜savaと総の交換日記〜
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去年の黒龍のプロポーズ大作戦からつづく話です。 のぞみ&譲子サイド。 ◇ 朔のバースデイパーティがお開きになった頃、雨はようやく小降りになっていた。 将臣達は軽く店を片付けてから帰る事にする、と言って店に残った。 黒龍は帰る者達に車を呼んでくれようとしたのだが、のぞみと譲子は酔い覚ましに歩きたいから、と辞退したので雨音の中こうして二人並んで歩いている。 夜とはいえ、さほど寒くもなく散歩には丁度いいくらいの気候だった。 譲子は傘の狭い空間に身を縮こませる事もせず、元気に雨を蹴りながら歩いてゆく。 道端にそこだけ場違いに明るい自動販売機の人工的な光が、先程のシャンパンがまだ残っているのかどこか夢見るようなほわんとした表情の譲子を照らしていた。 「朔、幸せそうだったな…本当に良かったですね!」 「譲子ちゃん、ほらそんなにはしゃいで歩いてたら濡れちゃうよ」 譲子は上気した頬のまま、はあい、とのぞみに返事をする。 だが足取りはまだ舞っているかのように軽く、いつ又スキップをはじめないとも知れなかった。 のぞみはそんな譲子の横に並んで歩きながらくすくすと微笑んだ。 「まるで自分の事みたいだね」 「だって、嬉しくないですか?」 ピンク色の可愛らしい傘がひょいと上がり、その中から譲子がのぞみを見上げた。 「そういえば先輩、何だかずっと考え込んでるようでしたけど・・・」 「え?そ、そう?ううん。別にそんな事ないよ」 「そうですか…?」 探るような譲子の視線にのぞみは困ったようにどぎまぎとする。 「まさか・・・あの・・・」 「うん?」 譲子は、もじもじと言いにくそうに躊躇ってから、それでも小さい声でのぞみに聞いた。 「先輩、もしかして朔が結婚するのが、淋しい、とか・・・思ってます、か?」 「へ?」 朔とのぞみは仲がいい。カフェでも、会えばいつも2人でくすくすと何か楽しげに笑って話をしていた。 朔は譲子の目から見ても落ち着いた雰囲気の綺麗な女性で、内心「いつかああなりたいな」と思っている憧れの存在でもあるのだ。 そんな朔がいざ人のものになるとなると、のぞみもやはり淋しいのかもしれない、と譲子は思ったのだった。 だがのぞみは譲子の問いに、きょとん、としてからぱっと破願した。 「まさか!もちろん朔と黒龍さんが結婚するのは嬉しいよ。譲子ちゃんてば、考えすぎ」 「そ、そうです・・・か?でも何だか…」 「そうだなあ、うーん、ちょっと・・・当てられたかなあ。目の前でプロポーズなんて、こっちがドキドキしたからね」 のぞみがそう言って軽く片目を閉じれば、譲子もようやく安心したように、ほっと笑った。 「そうですね」 「ギャラリー呼ぶなんて、ある意味逆にプレッシャーだと思うけど、黒龍さん凄いなあ」 「何だか意外でしたよね。あの黒龍さんが人に頼るタイプには見えなかったんですけど。男らしいのか男らしくないのか…」 「譲子ちゃん、それ言っちゃ駄目。男心は・・・」 「繊細、なんですね。よーく分かりました」 くすくすと譲子が笑いながら言う。 「先輩も、繊細なんですか?」 「う。繊細に見えない?」 そう言ってわざとらしく胸に手を当ててよろめいてみせたのぞみに譲子はくすくすと笑う。 「先輩、ほらそんなにはしゃいで歩いてたら濡れちゃいますよ」 「はあい」 「まるで、自分の事みたいですね!」 ここぞとばかりに先程のぞみに言われた言葉を返すことができた譲子は嬉しそうに笑った。 のぞみは少しだけ困ったような顔をして、笑った。
実はパーティの最中、のぞみの心の中では春日道場で言われた祖父の言葉が絶えずよぎっていたのだった。 ・・・男子なら一生をかけられる仕事を見つけろ。仕事に惚れて女には惚れさせろ。そしてその女を一生守れ・・・それが出来て、初めて男じゃ・・・ のぞみからしてみれば黒龍は余裕のある大人だと思っていた。 若いながらもカフェのオーナーとして店を経営し客入りはいつも上々、物腰も客あしらいも、店にかける情熱も何一つ落ち度がなく完璧といっていい。 実際、そんな大人の男が恋人に結婚を申し込むのに、あれほど躊躇しうろたえるとは思っていなかったのだ。 いつも余裕のある笑顔しか見たことがなかった黒龍でさえ、不安になるのなら。 のぞみはぎゅっと傘の柄を握り締めた。 自分はまだまだ、だ。 逃げてばかりいる今の自分では、何一つ掴めない。 将来の事をちゃんと、考えよう。 身体が弱い事。守りたい大切な人がいる事。全部・・・きちんと。 そうしたら。そうしたら、もしかしたら…いつか。 「あっ、先輩、ほら雨が上がったみたいですよ」 ひょいと傘から手を出して譲子が言った。 にこり、と微笑む、その顔。 ・・・この笑顔とこうしていつまでも歩いて行きたいな。一生・・・ そこまで考えたのぞみの頬に一気に熱が上がった。 ええと、そこまで考えてなかった訳じゃないけど、でもその、まだ早いけど、でもでも、どうにかこの先も生きて行けそうな感じだし、そしたら、やっぱり 「先輩?」 突然黙りこんだのぞみを心配そうに覗き込んだ。 その小さな手に傘先から雫がひとつぽとんと落ちた。 のぞみは譲子の細い指をなぞって落ちゆく露の軌跡を吸寄せられるようにじっと見つめた。 「綺麗だね・・・」 「え?」 「譲子ちゃん、雨も似合うね」 「・・・!!!」 譲子の顔が一気に真っ赤に染まった。 それを見たのぞみも自分の言った言葉に気づいて慌てた。 「あ、ああ、ええと、今のは、あの、」 「・・・〜〜〜!!せせせ、せんぱい〜〜!!」 「ああ、やっぱりシャンパンに当てられたのかな。・・・ごめん、考えてた事が声に出ちゃった」 「そっ、それあの、嬉しいんですけど、すいません・・・フォローになってないですよ先輩」 「あ、あはは〜?ええとその、雨が上がったんだよね。じゃ傘しまお、ね?」 「は、はい・・・」 のぞみと譲子はもぞもぞと決まり悪げに傘を畳んむと、またゆっくりと歩き出した。 傘が邪魔しない分、少しだけ近づいた距離で。 のぞみは自分の頬の熱さも自覚しつつ、ほんのりと赤く染まったままの譲子の顔を見つめて、思った。 ・・・近いうちに景時さんのお店に行ってみようかな。 譲子ちゃんが喜んでくれそうな指輪があるといいんだけど。 さっき譲子ちゃんの手に落ちた、雨雫みたいなのが。 ちゃんと、考えて。 未来に向って歩くから。 一緒に、隣に、ずっとこうして、いて欲しいから。 ◇ 書きながらUPしたので時間食いました。 待ってたらごめんなさい。総さま、皆さま。 rain drops = 雨の飴(笑) このへん過去ログ「spring day」のおまけから繋がってます。ええとホワイトデーののぞみから譲子ちゃんへのお返しは、キャンディの指輪だったんですよ。 ちなみにこの二人は相合傘はしませんね。 付き合いだしてもそれは変わらなさそう。互いのスペースはそのままでただ並んで歩く。きっと幼馴染ってそんな感じじゃなかろうかと。
きっちり待たせていただきましたわv ちゃくちゃくとラブッてますねv 過去ログも楽しみにしてまーす。
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