異常気象(仮)〜savaと総の交換日記〜
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バレンタインチョコ製作中譲子ちゃん。 文章はまた後ほど。
「譲子、湯せんの温度このくらい?」 「あ、ちょっと待って、・・・うん、大丈夫みたい」 「ふふ、すっかり料理上手になっちゃって。いつでもお嫁にいけるわね」 「もう、母さんってば。手伝うなら口を動かしてないで、手を動かしてよ」 「はいはい」 甘い匂いの漂う台所で交わされるのは楽しい会話。 それも一緒に溶けて混ざってゆくようで。 スイートチョコレート、ビターチョコレート。甘くて、ほろ苦い、少しだけ贅沢なお菓子。 菓子業界の策略と知りながらも、すぐにとけてしまうから寒いこの季節に本当にぴったりだと思う。 分量を計り、温度を計り、練り上げて、まるでそれは魔術のよう。 「泥あそびの間違いじゃねえのか?」 ひょい、と台所に顔を出した将臣がそうからかえば、 どこか似ている風貌の2組の緑の瞳が睨み返してきた。 「うるさいな。そう思うなら兄さんの分はホントに泥団子にするぞ」 「そうよ〜台所の主を怒らせると後が怖いのよ〜」 口では何と言おうとも、毎年きちんとラッピングされた菓子が将臣にも渡される。 それを嬉しく思う反面くすぐったくも思うので、ついつい軽口を叩いてしまう。 「へいへい、野郎はとっとと消えますよ。邪魔したな」 将臣がそれでも軽い足取りで去っていくのを見れば、やはり楽しみにしているのだろう。 「まったく。ろくな事言わないんだから」 「ふふ、うちの男供と来たらほんとに素直じゃないから。 あ、そうだ譲子、ちゃんと父さんとお爺さんにもあげてよ?拗ねると後が大変なんだから」 「わかってるよ。父さんと兄さんはこっち、お爺さんはこれで・・・」 「この特別製ケーキは望君ね」 「・・・うん」 ぽっと頬を染めて譲子が頷くのを、にこにこと微笑んで母親が見ていた。 その視線に気づいた譲子が、ふいと眼鏡に手をやった。 娘のその仕草に母親は遠い目をした。 「・・・その癖、照れる時にするのね」 「え?」 「ほら、眼鏡」 くい、と母親が譲子の真似をしてみせる。 「ああ、自分じゃ気がつかないんだけど、どうもそうみたい」 「ふふ、癖って似るのね」 「?え、うちじゃ他に誰も眼鏡なんてかけてないで・・・」 ピーピー 譲子の思考は電子音によって、かき消された。 「あ、オーブンの予熱、終わったみたいね」 「じゃ、これとこれ・・・」 ◇ つづきます
てきぱきとケーキをオーブンに入れてゆく譲子の姿を母親は静かに見ていた。 譲子のエプロン姿やきちんと三角巾で覆われた頭からのぞくお下げの髪は、 本人に言えば怒るだろうがチロルの子供のようでとても可愛らしかった。 あなた、こんな可愛い姿を見ないで逝っちゃったわね。 バレンタインも、貰い損ねて。 「母さん!ボーっとしてないで、今のうちに洗い物!」 「はいはい、もう。どっちが母親だかわからないわね」 「そう思うなら、はい頑張って!」 譲子の本当の父はもう他界していない。 彼女が「父さん」と呼ぶのは、再婚した今の---将臣の父、の事だ。 でも娘のふとした仕草、声、そこには「彼」が宿っている。 同じく妻を亡くして自分と再婚した夫も、将臣のふとした仕草の中に前の妻の面影を見出す事もあるのだろう。 それは彼等がそこにいたという何よりの証。 記憶も、彼等が愛用した品物も、時の流れにさらされてゆっくりと古ぼけてゆく。 けれど何よりの形見がここにある。 「母さんは、父さんと兄さんとお爺さんの分だけじゃないの?この分量だと多くない?」 「・・・これはね、うふふ」 未来の息子に、かな。 そう言って笑った母親に、譲子は一瞬きょとんとした後にぱっと赤面した。 「・・・母、さんっ」 そう言うと譲子は母親を上目遣いで睨みながら、また眼鏡に手をやった。 母親はそれをくすくすと楽しそうに笑いながら見つめた。 彼等がこれからどうなるのかは分からない。 けれど、続いていって欲しいと思う。 そしていつか・・・ 「早く孫の顔が見たいなあ」 「ななな、なんだよそれはっ」 彼の生きていた証が。私が彼を愛していた証が。 続いていけばいい。 ◇ green green のタイトルは例の歌から引用(笑) 譲子ちゃんが幼い頃に亡くなった父のことを覚えていなくても、 身体の中に生き続けているのですよ。 有川家(東)夫婦は一度失くした家族をもう一度作っているので 愛が何層構造にもなっている気がします。 互いが互いを愛してますし、その失くした伴侶も変わらずに愛してます。 反発するものじゃなく、重なっていくものだと。 ・・・最近私、このテーマ(家族の再生)多いですねえ。
しまった、お爺さんがいるのは春日家だった!! ありゃ〜。ログ収納の時にでも訂正しますね。 すみませんーきゃー。
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