異常気象(仮)〜savaと総の交換日記〜
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のぞみくん、18禁しちゃったの!?(笑)
先輩が、髪を切った。 先輩の長い髪はもうトレードマークになっていて、本当に綺麗で、大好きだった。 でも、嬉しそうに笑う先輩の笑顔は今まで見た事もないくらい、輝いていて。 こんな笑顔が出来る人だったなんて、今まで知らなかった。 「似合う、かな?」 「はい。素敵、です」 「ありがとう」 もっと、知りたい。 先輩。 もっともっと、貴方を好きになってもいいですか? ◇ 付き合いだした私達は、たぶん他の人から見たらそれまでと何も変わらなかったと思う。 一緒に学校に行くのも、帰るのも変わらない。 すんなりと日常に感情が融けていた。 「お前らなあ…もうちっと新鮮でもいいんじゃねえ?」 なんて兄さんが呆れて言ったりもした。 それは私達には年月があったから。 始まったばかりの恋なんかじゃない。隠し続けていた、長い長い恋だったから。 先輩の家に久しぶりに遊びにいって、何という事もなく、いつものように庭の見える大きな窓のあるリビングでお茶を飲んだり喋ったりしていた。 それでも、私達の間にはふわふわとした綺麗な空気が漂っていた。 きっとこれが「幸せ」と呼ばれるものなんだと思う。 笑顔が止まらなくて、相手もやっぱり笑顔で。 この過ぎていく一瞬一瞬が綺麗で、惜しくて。 そんな中で、先輩がふっと真顔になった。 「譲子ちゃん…お願いがあるんだけど」 「はい、何ですか?」 と聞けば、先輩は少し言いにくそうに照れながら言った。 「あのね…ええと…お下げ髪、解いてもいい?」 「え?」 「譲子ちゃん、いつも髪結ったままでしょ。下ろしたとこ、見たいなあって…駄目?」 ぱ、と赤くなって懇願する先輩の様子に、逆にこちらが照れてしまった。 いいですよ、と言いかけて、はっと思いつく。 そうか、もう遠慮とかしなくていいんだ。 「じ、じゃあ、私もお願いがあるんですけど…」 「うん」 「先輩の髪の毛、結ってもいいですか!?」 「へ?」 思わず勢い込んで言ってしまった私に、先輩の目が点になった。 「わ、私も…先輩の髪の毛、結ってみたいって思ってたんですけど…ええと交換条件ってことで。だ、駄目、ですか?」 一生懸命言ってみたら、先輩は何故か更に照れて、ああ、うん、ええと、とかもごもご口の中で呟いた後に「いいよ」って笑った。 「嬉しい。ちゃんと結ってみたいなって思ってたんです」 「…くすぐったい」 私は先輩の髪を丁寧にひとまとめにした。 三つ編みは、のぞむ兄さんみたいだって嫌がりそうだったから、ちょっと低めの高さのポニーテールにしてみた。 「きつくないですか?」 「大丈夫だよ。似合う?」 「はい、とても」 向かい合って互いの姿を見た私達はどちらからともなく笑いだしてしまった。 「あはは、いつもと逆だ」 「ふふっ、本当ですね。先輩、髪伸びましたね」 「…うん。男なのに変だよね、気持ち悪くない?」 先輩はいつもより行儀よく束ねられている自分の髪に、する、と手櫛を入れた。 絹糸のような先輩の髪は指に絡まる事無く、さらさらと指から零れ落ちていく。 その流れに眼を奪われながら、私は首を振った。 「いいえ全然。綺麗です」 「ありがと。でも譲子ちゃんの方が、ずっと綺麗で可愛いよ」 にこにこと嬉しそうに笑いながらそう言われると、この癖っ毛で厄介な髪も不思議と本当に可愛いような気がしてしまう。 先輩は私を一瞬真顔で見つめると、視線を窓の向こうの庭へと向けた。 「この髪の毛…伸ばしていた理由…言っても、いいかな?」
先輩の硬い視線に、私の背筋がしゃん、と伸びた。 「はい」 思わず居住まいを正した私に、先輩はふっと優しい笑って「ありがとう」と言った後、また庭を見ながら、ぽつり、と言った。 「…願掛け、だったんだ」 風が出てきたのか、さわ、と庭木が揺れた。初夏の日差しに晒された緑色が、眩しく煌めく。 しばらくそうして木の影を見た後に、私は口を開いた。 「どんな願いだったんですか…って聞いてもいいですか?」 先輩は光が眩しいのか、少し目を細めて、けれど窓からは眼を離さないままに言った。 「ボクが子供の頃の事、覚えてる?身体が弱くて…病院ばかり行ってて」 「はい」 忘れたりしない。先輩は子供の頃、本当に優しくて儚げな男の子だった。だから、私は不安だったのだ。 いつか、もしかしたら、神様がどこか遠くへ連れて行ってしまうんじゃないかって。 「…ボクはね、ずっと、大人になれないと覚悟していたんだ」 先輩の言葉に、私ははっと胸を突かれた。 「18まで生きられないと思ってた。だから18まで生きられますように。それが、願いだったんだ…」 ベットにいた先輩は、熱に浮かされていても、具合が悪くても、いつでも私達を笑って迎えてくれた。 だから気付かなかった。先輩の不安は私なんかよりも、ずっと重かったに違いないという事にさえ。 「そんなっ、今は…」 言いさした私に、先輩は何かを確かめるかのように頷いた。 「うん。超えられた」 先輩は今年の春、18歳になった。 「だから言えるんだ」 先輩は庭から目を離して大きく息をつくと、私を真っ直ぐに見つめて言った。 「――君が、好きだった」 先輩は、私を、光る庭を見つめていた時のように眩しげな瞳のまま、見ていた。 「…出会った時から、ずっと」 その時、光のように突然、古い映像が網膜を焼いた。 あれはいつの事だったのだろう。 母に手を引かれて、知らないお家にやって来た不安… でも外は今日のようにいい天気で、きらきらと光る庭に、いてもたってもいられなくなり、こっそりと抜け出して、花を追いかけているうちに迷って、不安になって泣いていた幼い自分… 私の混乱など知らず、先輩は淡々と言葉をつづけている。 「どうせ死んでしまうなら…言わずに消えようって思ってたんだ。君の事を思う気持ちごと葬ってもらおうと」 その声が遠くに聞こえた。 頭の中の映像は古い映画のようにカタカタと音を立てそうにぎこちなく、それでも止むことなく続いていた。 雨のように降る花の中から聞こえた声に目を上げれば、いつの間にそこに現れたのか、か細い少年が心配そうな瞳で立っていた。 少年の肩までの髪の毛がさら、と花風に揺れていた… 『…どうして、ないているの?』 「なのに、諦められなくて」 映像はゆっくりとゆっくりと、私の頭の中でまわり、 少年の姿は次第に目の前の青年へと重なっていった。 あれは、あの子は。 「せん…ぱい…」 ぱっと表情を変えて、先輩が笑った。 「あはは。やっぱり気持ち悪いかな。こんなに暗くて、重い話はないというか」 そう言って笑う瞳の奥に、傷つくのを恐れている少年の面影が揺れたのを見た瞬間、私は何も考えられずに、ただ手を伸ばした。
「先輩っ…!!」 先輩に触れた瞬間、細い肩が、びくり、と揺れた。 私はそのまま、先輩を思い切り抱きしめた。 あの時、思ったんだ。やっと会えた、と。 今度こそ、この手を離してはいけないのだと。 「―もう、ひとりで苦しまないで……!」 忘れていた記憶の昔から、今まで絶えることなく。 「大好きです…!!私も大好きです。ずっとずっと」 強張っていた先輩の身体から、ゆっくりと力が抜けていく。 「譲子、ちゃ…」 先輩の抑えようとする掠れた声に、震える肩に、思わず涙が零れ落ちた。 私は抱きしめていた手を緩めて、先輩の顔を覗きこんだ。 今なら分かる。 先輩の笑顔の下に、どれ程の我慢があったのか。 弱音を吐く事無く自分と戦っていた。 死の不安を笑顔に変えて、私の心を守ってくれようとしていた。 「だからもう――隠さないでいいよ。あなたを、全部、見せて」 ぐしゃ、と泣きながら、なんとか笑顔を作ってそう言えば、先輩がはっと目を瞠った。 「綺麗じゃなくても、かっこ悪くてもいいの。先輩がいない世界なんて何の価値もないの。先輩にいて欲しいんです」 先輩の笑顔が揺れて――やがて滲んだ。 「ありが、とう…」 先輩の目から零れ落ちた涙をそっと拭ったら、先輩の手が私の涙を拭った。 それが何だか可笑しくて、私はぼろぼろと涙を零しながら、泣き笑いした。 「はじめて会った時みたいですね」 「え…譲子ちゃ…思い出したの?」 「はい…ねえ、私、あの時も、こうやって泣いていて…困らせましたよね?」 すり、と先輩の手に顔を擦り付けてみせれば、笑いながら拭いてくれた。 「変わってないんですね、私」 「それ言ったら、ボクも同じだよ」 先輩もお返しとばかりに私の手に顔を寄せた。 庭の光に照らされて、泣いて、笑って。 「ずっと、同じところにいたんですね、私達」 「そうだね…」 きらり、と沢山の緑を反射して、光が眩しくまた光った。 ◇ 「ああ、さっぱりした」 短くなった髪で笑う先輩は、何だか眩しかった。 「子供の頃に、戻ったみたいですね」 「うん。何だか軽いよ」 きっと、軽くなったのは、髪の毛だけじゃないんだろうな、と思いながらも言ってみる。 「でも…少しだけ、もったいないって思っちゃいます。あの髪形も、先輩にとっても似合ってたから…」 そう言った私に、先輩は振り返って笑った。 「ふふ、ありがとう。譲子ちゃんが好きなら、また、伸ばすよ」 「先輩」 「それでいいかな?」 「……はい!」 光の中で手を繋いで、変わらない日常の中に、ゆっくりと感情の根を張ってゆく。 ボク達は 私達は これでいいんだ やっとここに戻って、 ここから、はじめよう 二人で ―― 最初が最後の恋
やっと報われたのですね!らぶらぶv 長かった、いろんな意味で長かったですよ! おめでとう、譲子ちゃん!!(本家の方もお願いしますよ(笑) のぞみくん、髪をきっちゃってまた伸ばすっていってるけど、短いのになれちゃったらきっと長くはできないと思います。うふふ。どこまで伸ばせるかなぁ? 私の方も幸せにしたげたいけど、そうすると冬の話アタリからかかないといけない。書きたいものが多すぎるー!! こっちは譲ちゃんが髪切ったり。いや、逆に伸ばすかな?(笑)
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